2025年4月11日
川崎市長 福田紀彦殿
健康福祉局長 石渡一城殿 川崎から公害をなくす会
会長 神戸 治夫
「川崎・横浜公害保健センタ―」を廃止することに対する、私たちの見解
昨年10月末の市議会において、川崎市は「川崎・横浜公害保健センタ―」を廃止する方針を示しました。「今後の在り方」によれば、2026年度末にもいま実施している検査検診等の事業は終了する計画とのことです。
同センタ―は、元をただせば、1974(昭和49)年11月11日に川崎市が仲介して成立した、公害被害者住民と公害発生源企業及び市の3者による確認書をもとに、企業の財源を基盤に構築された「川崎市公害健康被害補償事業」の3つの事業の一つである「市民施設の建設」として始まったものです。因みに3つの事業とは、①公害健康被害補償法が関与しない昭和49年8月前に係る補償問題の解決(いわゆる過去分の補償) ②同法の施行に伴う不利益分の補填(市公害健康被害補償条例による措置) ③市民施設の建設(仮称小児ぜん息センタ―の設置)のことであり、このうち、③の市民施設の建設が『川崎市健康被害補償事業の中核をなすものだ』と説明されています(「公害被害者対策10年の歩み」による)。何故なら、公害病患者が最も強く望んでいるのは、健康の回復でありお金で健康は購えないからであるとされました。
私たちの会は、当時の川崎市長及び「川崎公害病友の会」とともに、これら確認文書に調印した当事者です。かかる立場から、私たちは今般「川崎・横浜公害保健センタ―」が廃止されようとしていることに関し、次の見解を表明するものです。
(1) 当事者である「川崎公害病友の会」や「川崎から公害をなくす会」に、何らの話もなく一方的に 川崎市が公害保健センタ―を廃止することは、信義に反する行為です。
(2) 川崎市の実態調査によれば、市内には現在約2万人近くの気管支ぜん息患者が現存している。公害保健センタ―は、「市民のための施設」であり、患者の健康回復のために建設されたものです。これは、すべての気管支ぜん息患者の治癒と健康回復のために活用されるべきです。「医学的検査は民間医療機関でもできる」などと、問題を矮小化したり、事務的・官僚的に処理されるべきではありません。
(3) 川崎市と私たち公害被害者住民団体との間で交わした確認書には、「市の行政機構の総力を挙げて公害防止の施策を展開し、環境の浄化に努めるものとする」とあります。「公害は改善された」などと宣伝する前に、先ずは未達成になっている二酸化窒素に係る環境目標値の早期達成をはじめ、微小粒子物質の更なる改善など、大気汚染公害の根絶に向かって市政の総力を傾注すべきです。
(4) 先の「川崎公害訴訟」では、被告企業がしきりとぜん息のアレルギー原因説を唱えた。アレルギー疾患対策基本法の疾病に、気管支喘息が含まれると言っても、例えば成人ぜん息の場合、アレルゲンが発見できないものが4割を占めるとされています(環境保全再生機構の資料)。川崎市のアレルギー疾患対策推進方針では、これを無視ないし軽視しているのではないか。他のアレルギー疾患との「公平性」の名のもとに、公害ぜん息患者を切り捨てることは、それこそ不公平であり問題です。
(5) 同センタ―について、今後の財源の補充や施設整備等については、公害発生責任の一端を負っている川崎市として当然の仕事ではないか。川崎公害訴訟において、川崎市は幸いなことに被告になることを免れたが、判決では「本件道路」として市が管理している国道132号線等はもちろん、ほかの市道も「関連道路」としての共同不法行為責任が、また県とともに川崎市にも、賠償責任があることが認められています。
(6) 川崎市が、適切な公害環境政策を進めて行く前提として、引き続き気管支ぜん息は当然のこと、前駆症状を含めた健康被害についての実態調査を、継続・拡充していくことが絶対に必要です。