4.東京電力(JERA)川崎火力発電所からの窒素酸化 物削減に係る質問並びに要請とその回答

2023年9月11日

東京電力(現JERA)川崎火力発電所からの窒素酸化物削減に係る質問並びに要請

   川崎市環境局環境評価課 課長 深堀孝博様

同  環境対策推進課 課長 加藤之房様

川崎から公害をなくす会  会長 神戸 治夫

 日頃、本市の公害・環境問題解決にあたり、ご尽力されていることに敬意を表します。私たちこの半世紀、大気汚染の根絶を目的に活動してきた被害者・住民の立場からすれば、川崎市の大気汚染公害対策をもっと前進して頂きたいと願っています。

 窒素酸化物の削減については、行政や市民・企業3者の努力により年々成果を上げていることは認めます。しかし、いまなお公害被害者の増加や光化学オキシダント・酸性雨等の発生、熱中症被害をはじめ深刻な地球温暖化(沸騰化)の防止の観点からすれば、早期に市の環境目標値(日0.02ppm)を達成し、さらにWHO指針値(21年9月)の実現を目標にされることが必要と考えます。そこで、JFEスチ-ル高炉休止によりいよいよ市内第1位の巨大な発生源となる、東京電力(現JERA)川崎火力からの窒素酸化物削減についての要請とこれに関しての質問を致しますので、ご回答を宜しくお願いします。

 記

 1996年に、旧川崎火力発電所のリプレ-ス計画*(50万kw×6軸 300万kw)が発表された時、住民側からNOxがさらに増加するのは反対との声が出され、排出量は旧川崎火力と同じ計画値である1,190t/年を守ることとされました。これは、東京電力による環境影響評価修正報告書(1996年12月)に明記されています。ところが、その後事業者から2号系列2軸・3軸の増設計画が発表され、発電力量が合計342万kwと増えその結果排出量の計画値も1,440t/年に変更となりました。
*事業者はリフレッシュ計画という

 質問1.「川崎火力発電所2号系列2軸・3軸設備増設計画」の評価の結果の中に、『MACCの窒素酸化物排出濃度5ppmを10%低減することを目標として取り組む』とあり、これは4.5ppmに相当しますが、この数値は運転後に実施されているのでしょうか。また同数値が超えていることはないのでしょうか。    (MACCは1号系列の1~3軸と2号系列の1軸)        これらの点について、デ-タを含め環境影響評価事後報告書を提出させて頂きたい。

要請1. 環境局担当課による資料によると、川崎火力の最新2021年度の実績値は1,304.3t/年であり、排出濃度4.5ppmの時の排出量である1,360t/年をクリア-しているように見えます。しかし、前述したような状況を考えれば、当面少なくともリプレ-ス計画時に約束した1,190t/年に引き下げることが求められます。しかもこれは計画値なので、旧火力廃止前の実績値の排出量が比較的多い2000年度でも869.5t/年なのだから、当面これ以下となるよう指導して頂きたい。

要請2. もっとも、最近の発電所のNOx排出濃度は4ppmやそれ以下が開発されているようです。従って、MACC の排出濃度をさらに引き下げること、また2号系列の2~3軸である「MACCⅡについても・・最新技術の導入についても検討を行う」(評価書)とされているのだから、可能性を追究し最新の技術の導入をはかるよう指導して頂きたい。

以上、市民のいのちの健康・環境をまもるため質問と要請を行います。

(注) ・2000年度  旧川崎火力廃止(2006年)以前 105万Kw ・2007年度6月 1号系列第3軸運転開始 50万Kw  ・2009年度2月 1号系列全軸運転開始 150万Kw ・2013年度 2号系列第1軸運転開始 200万Kw ・2016年度6月 2号系列全軸運転開 342万Kw 2021年度 最近の状況 342万Kw

{川崎市の回答}  前文は略
1、質問1について  株式会社JERA川崎火力発電所におけるMACC(1号系列1~3軸、2号系列1軸の窒素酸化物濃度について、発生源自動監視システムによるデ-タでは、日平均値として概ね4.5ppmを下回っています。なお、本事業の大気質の予測評価は、旧東京電力株式会社が環境影響評価法に基づき手続きを実施し事後調査は実施しないとしているため、事後調査報告書を作成しておりません。

2、要請1について  本市における窒素酸化物排出量は、市条例で定めている対策目標量の「年間9,330トン以下」を平成24年度以降連続で下回っており減少傾向がみられていますが、市内の事業所に対しては、大気汚染防止法及び市条例における規制基準の順守を指導するだけでなく、更なる環境負荷の低減に向けた削減についても要請しているところです。

3.要請2について  本市は旧東京電力株式会社による川崎火力発電所2号系列2軸、3軸設備増設計画に対して環境影響評価法に基づき環境の保全の見地からの意見を平成24年7月10日付けで神奈川県知事に提出するとともに、同日付で公表しています。(別添) その中で、本市として窒素酸化物排出量の一層の削減対策として、既存設備を含めた排煙脱硝装置の効率向上や最新技術の導入などの取り組みを既に求めております。