川崎の公害発生源
これは、言わずと知れた臨海部(川崎区)に群立する、電力や鉄鋼・石油・化学などの大工場からのもので市内の大半を占めています。
川崎公害は戦前からありましたが、特に1960年代からのエネルギ-転換政策により千鳥地区や浮島地区の石油コンビナトの形成、その後扇島埋立がされ、燃料も石炭から石油へさらに天然ガスへと移行する中で、甚大な公害と被害がもたらされました。一方この工場地帯では、近年石油工場等の再編がすすみFFEスチ-ル(旧日本鋼管)が2023年秋には高炉を廃止するなど大きな動きが生まれています。
1. 市内の窒素酸化物と硫黄酸化物の排出量の推移
両物質とも、年々減少してきています。しかし、解決されたかのような硫黄酸化物の排出が最近増加したり、何よりも窒素酸化物の削減がわずかなのは問題です。

2. 主な大工場の排出量の推移
大手工場のうち、主な工場の窒素酸化物と硫黄酸化物の排出量について見ると、総体としては削減傾向が見られますが、窒素酸化物については施設拡大した東京電力の今後の増加が気になるところです。
① 窒素酸化物

② 硫黄酸化物

3. 工場と自動車の排出量
川崎市の資料をもとに、自動車と工場・事業所の窒素酸化物及び粒子状物質についての排出量を比べてみました。もともと工場等からの排出量が大きかったのですが、その減り方は自動車に比べ少ない。亜硫酸ガスのように抜本的な削減が必要です。これは環境目標値の達成のためにも必要です。
① 窒素酸化物

② 粒子状物質

4. 脱硝装置等の設置件数
大気汚染を防ぐためには、燃料転換や燃焼方法の改善・生産の仕方等いろいろありますが、何と言っても脱硝装置や脱硫装置など公害防止設備の完備です。市内の工場・事業場について調べた結果は次のようになっており、いまは窒素酸化物への対応が中心になっています。
脱硝設備 | 触媒を使用したもの | 触媒を使用していないもの | ||||
工場等 | 設置数 | 処理能力(m3N/h) | 工場等 | 設置数 | 処理能力 (m3N/h) | |
1990年以前 | 6 | 8 | 5,301,880 | 4 | 9 | 903,223 |
---|---|---|---|---|---|---|
1991年から2000年 | 13 | 25 | 5,166,503 | 4 | 9 | 732,614 |
2001年から2010年 | 20 | 39 | 9,647,714 | 2 | 4 | 92,500 |
2011年から2020年 | 11 | 21 | 13,015,813 | 2 | 3 | 735,000 |
① 脱硝設備
設置件数

処理能力

② 脱硫装置
設置件数

処理能力

5. 臨海部からの排煙は、市の北部まで移流
近年、喘息や呼吸器疾患は空気がこれまで、比較的きれいだった市の北部地域で増加しています。もちろん近くを通る高速道路等の影響があることは当然ですが、風向きと臨海部の高煙突化により約30~40kmも遠くに着地することは環境影響評価書でも記載されており、下のように私たち住民のそくてい調査からも明らかになっています。丸囲みの数字はPM2.5の濃度。
