被害

1. 気管支ぜん息の実態

大気汚染によると考えられている、市内の気管支ぜん息患者の人数については、川崎市医師会が1970年代から毎年、実際に医療機関を受診している患者の実態調査を進めています。以下はその報告書をもとにグラフに表したものです。

① 気管支ぜん息患者数

気管支ぜん息患者数グラフ

② 人口千人対(人)

人口千人対グラフ

③ 区別患者数

区別患者数グラフ

④ 同人口千人対

同人口千人対

⑤ 区別の推移

区別の推移グラフ

⑥ 同人口千人対

同人口千人対グラフ

2. 心疾患・気管・気管支・肺の悪性新生物等の死亡率の推移 (人口千人対)

次は、市の健康福祉年報のデ-タより作成したものですが、大気汚染が主な原因と考えられる気管や気管支・肺の悪性新生物等の死亡率が年々増加していることが分ります。大気汚染のなかでも、特に微小粒子状物質の影響が危惧されます。

心疾患・気管・気管支・肺の悪性新生物等の死亡率の推移グラフ

3. 公害病認定患者の死亡分析

川崎の公害病認定制度は1970年に始まりましたが、1988年3月に財界の圧力により新規の公害病認定は廃止になってしまいました。認定総数は一頃6,000人余りに達しましたが、2018年末段階において現存被認定者は1,258人で死亡者は2,701人となっていました。その差は治癒や期間満了・否更新・転出です。次はそのうち統計の取れる2,695人についての分析です。(詳しくは川崎から公害をなくす会の50周年記念誌を参照)

認定疾病845 (31.4%)溺死11 (0.4%)
悪性新生物432 (16.1%)窒息13 (0.5%)
脳血管疾患194 (7.2%)自殺40 (1.5%)
呼吸器疾患360 (13.4%)不慮の事故26 (1.0%)
環器疾患396 (14.7%)老衰65 (2.4%)
消化器疾患97 ( 3.6%)その他8 (0.3%)
腎・泌尿器疾患39 ( 1.4%)不詳・不明102 (3.8%)
重篤な全身急変67 (2.5%)
全期の死亡原因割合の分布グラフ
(グラフ-1)  全期の死亡原因割合の分布

4.「サ-ベイランス調査」でも、NO2濃度とぜん息の間に正の関連性

環境省などは、大気汚染との関連性はないというが・・・
20年以上前から、毎年実施されている環境省の「大気汚染に係る環境保健サ-ベイランス調査」は、北海道から沖縄まで全国38地域、それぞれ8~9万人を対象にした大規模な調査です。ところが、気候条件や地域の特性を無視して全国一本で解析しているため、「関連性はなかった」という結論を出しています。これに疑問をもった西川榮一氏(元神戸商船大学)が、全国8ブロックに分け解析しなおしたら「NO2濃度とぜん息の間に正の関連性ある」との結果となりました。

『人間と環境』(日本環境学会2019年6月発行)から。

川崎市の調査地域は幸区ですが、3才児も6才児も二酸化窒素も浮遊粒子状物質も、また二酸化硫黄との間でも大気汚染と健康被害の間に強い相関関係が認められることが判明しています。

● 6才児の例 2008年度から2017年度の10年間 縦軸-有症率 横軸-濃度(ppb・μg/m3)

NO2相関グラフ
SPM相関グラフ